第10回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(教育講演6)

第10回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(教育講演6)

病院総合医育成のcore module –大学病院総合診療部門の視点からの検討
座長:多胡雅毅
演者:志水太郎、佐々木陽典、鋪野紀好、和足孝之、髙橋宏瑞

[企画概要]
日本において総合診療医は病院総合診療医と家庭医に大別される。2つの領域は親和性が高く、特に家庭医の役割は明確である。しかし病院総合診療医の役割はセッティングによって大きく異なり、認定制度も乱立し、その定義は明確でない。特に専門領域に特化すべき大学病院でその役割を果たすことが難しい側面もある。本企画では大学病院総合診療部門を背負うリーダー、指導医が集い、病院総合診療医について議論を行う。
本企画の目的は病院総合診療医を目指す医学生や初期研修医が、明確で具体的な目標と目的を持って総合診療専門医プログラムを専攻し、誇りを持って病院総合診療医を目指すことができるように、大学病院総合診療部門の視点から、病院総合診療医育成のcore moduleを明確にすることである。当日はJPCAJHGMJHAJCHOなどの認定制度も交え、専門研修において病院総合診療医としてまず習得すべきスキルや、専攻医の関心が高いスキルについて検討を行う。

[資料]
教育講演6

[抄録]
JPCA10_教育講演6

[セッション内容]
東邦大学 佐々木先生からJUGLERの目的、本セッションの目的、core moduleについての説明がなされた。

[JUGLERとは]
Japan University General medicine Leadership and Education Roundtable(日本大学総合診療リーダーシップ・教育円卓会議)の略称であり、大学総診の抱える困難への解決策を見つけるため、学会・専門医制度等の既存の枠に囚われず若手医師が自分たちの「理想の病院総合診療医」の姿を明確にして、大学病院総合診療科の必要性を発信することを目的としている。

[core moduleとは]
core moduleJUGLERが提唱する、「施設ごとの差異」を克服しつつ、「理想の総合診療医」を「共有」するための手段である。総合診療医は調整/管理/運営に携わる機会が多く、多様な問題や課題に対処できる創造力が必要である。また従来の臓器別専門領域に対して新規参入するため、総合診療医が活躍できる場を作る能力が求められている。これらの能力をまとめてソーシャルスキルとして、総合診療医に必要な臨床・研究・教育の三本柱以外に4つ目のカテゴリーとして加えている。
その後core module、ソーシャルスキル、リーダーシップ、大学の総合診療部門の意義、必要性、専門医制度と総合診療専門医、総合診療の専門性、core moduleに関する取り組みの今後の方向性などについてフロアの参加者と意見を交換した。

[議論のまとめ]
大学でこそできる総合診療について、より具体的に考えていく必要がある。core moduleについては、フロアからは比較的好意的に受け入れられた。総合診療の不明瞭な役割を明確にする意味でcore moduleは非常に有用であり、制度設計に左右されない基礎の部分を明確に作って行く必要がある。領域の発展のために、地域性、制度、派閥などの垣根を取り払った俯瞰的な視点から、今後も日々継続して努力を重ねていくことが重要である。

[セッションを終えて]
予想を遥かに上回る数の先生方にご参加頂き、インタラクティブな進行方法で実りあるディスカッションを行うことができました。
今回は我々6名のコアメンバーで考案したcore moduleについて、会場の皆様に情報共有し、会場からご意見を頂きました。本日のご意見を参考にブラッシュアップを進め、次は9月の日本病院総合診療医学会学術総会でセッションを行いたいと思っております。
またコアメンバー以外にも、グループメンバーを募ってモジュールをさらに洗練されたものにしていくことも検討しております。
ここ数年、あれこれ議論されている大学総診ですが、大学病院に総合診療部門は必須であると考えます。若手の先生方にあるべき病院総合診療医像を明示し、全国の大学で環境や背景の違いを共有し、さらにその垣根を越え、病院総合育成ひいてはこの領域の未来のリーダーを多数作っていく、という大きな目標を掲げて、JUGLERでの活動を頑張って参りたいと思います。
ご参加、ご協力、ご指導いただいた各方面の先生方、誠にありがとうございました。

本セッションの内容は日経メディカルに掲載されています。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201906/561200.html